コミュニティーカレッジのESL。【オリエンテーリング編】

コミュニティー・カレッジ

本日は、9月から通うコミュニティ・カレッジの"New Student Orientation"に参加してきました。改めて「コミュニティー・カレッジ」とは、地方自治体が運営する公立2年制大学のことです。全米の短期大学の8割以上を「コミュニティー・カレッジ」が占めているという話もあります。学生の内訳は、(1)働きながら特殊技能を身につける学生、(2)フルタイム学生として成績と単位を稼いで4年制の大学へのTransfer目的の学生、(3)学位を必要とせず趣味感覚で通う地元民学生、という3種に大別されます。いずれの道を選ぶにせよ、英語を母国語としない人は、ESLクラスを卒業・もしくは卒業レベル(TOEFLなどで判定)に達さないと、専門教科を受講できません。


さて、このカレッジは、−おそらく全米の高等教育機関はほとんど同様だと思いますが−、インターネット・WEBを使ってあらゆる情報(講義内容からイベント通知・講師履歴・教室番号など)の伝達をします。ネット活用度は、日本よりかなり徹底していると思います。私もクラス登録の際に学生用サイトのIDをカレッジから与えられました。なるべく毎日サイトを見るようにしていまして、今回のオリエンテーション開催についても、そこで知ったのです。案内には、特に「○○対象」とも書かれていなかったので、「ESL学生だけどいいのかな?」「行ってダメだったらカレッジ内を見学して帰ってこよう」という話にり、気軽な気分で朝の8時過ぎに2人で家をでました。


カレッジは我が家から北西方向の隣町の緑に囲まれたのんびりした町外れにあります。ホールの受付に到着して、「ESL学生なんですが・・・」と名乗るも、ごった返しているためあまり真剣に聞いてもらえない様子。名前と電話番号を伝えると、赤色の紙の腕輪を渡されました。今思えば、ここが過ちの第一歩。あとで分かることですが、このオリエンテーリングはフルタイム学生、つまりネイティブの新入生を対象としたものだったのです。それならそうと、HPにも書いておいてちょうだいよ!そもそも、ESL生涯学習受講の学生はオリエンテーションなんて眼中にないのかもしれませんが。


席に着いてまもなく、腕輪の色別グループで呼び出され、在校生のお姉さんに先導されてホールから体育館へ移動することになりました。次第に血の気が失せ始めます。本来なら夫は「Parents Session」に参加するべきところ、無理やり保護者として体育館まで着いてきてもらいました。他にそんな学生はいませんが、英語の指示内容が分からないのだから、背に腹は変えられず。体育館では在校生が拍手と口笛で歓迎してくれましたが、私は笑顔もこわばります。エアロビのインストラクターみたいなタンクトップで元気一杯のお姉さんが、壇上からマイクで次々に軽快な指示を出します。後ろについてきてくれた夫が、「やばいかも。体を使って友だち作りましょうというセッションらしいよ。」とささやきます。ヒー!100名ほど集まった新入生をざっと見渡すと、ほとんどが高校を卒業したばかりと思しきキャピキャピでツルツルな若者ばかり。数人、推定20代後半〜30代黒人女性が目に付きましたが、【英語ができない30代女性のアジア人】である私は明らかに浮いてます。「場違い」という言葉は、まさに今の私の状態を言うのだ!という状況に陥りました。


まずは壇上のお姉さんから、近所の人と自己紹介をするようにとの指示。とりあえず、一番近くの女の子と名前を名乗りあい、日本から来たとだけ宣言させてもらいました。彼女、ビックリしてたなあ。続いて誕生日月でグループを作るように指示されました。みんな自分の生まれ月を連呼するので(この辺の自己主張の強さはさすが)、自然とグループ化されるのです。3月生まれの私のグループは、妙に多かったです。そのグループで輪になって人間椅子(一方向を向いて自分のお尻を後ろの人の膝にのせるやつです)を作り数歩前進、その逆方向も実施。ここまでで、とにかく早口のインストラクターの英語が10%ほどしか聞き取れず、近くにいる夫に内容を確認の上、前後左右の人の様子を見て何とか格好を合わせる始末。日本語だったら、本当に些細な指示内容なのに、身も心もクタクタです。それでも、周りのボランティア学生から外に出るように言われないし、日本人特有のへらへら笑顔が事態を楽観的に見せてるのか、もうこれは腹をくくるしかありません。


しばらくすると、夫も体育館から引き上げたので、孤立無援状態に。夫は「楽しそうだったし、慣れてきたみたいだから、そろそろいいかなと思って」とのことだったみたいです。いやいや、楽しむ余裕はないですって。早く時間が立てばいい、時計を見ながらそればかり祈っていたのですよ。その後も着々とゲーム感覚の指示は進み、3人グループを作って同じもの探し(「好きな食べ物はピザ!」といって合っていれば皆でジャンプ)、2人一組で背中合わせに腕を組み「歩く・ジャンプする・唸る」1セットで15秒ことにパートナー交代していく、など、「よくこんなに色んなプログラムがあるな」と感心しながら必死についていきました。学生達もしらけムードなしに真剣に取り組んでいるのが清々しいです。そういえば、教職課程の授業で、体を使って打ち解けさせる似たようなプログラムがあったなーと、思い出したりしました。


そして、傍観者気分も吹っ飛ぶ極め付けのプログラムが待ってました。まずは、20名位の大グループでハンカチ落としの円のように中を向いて座るように指示。次に、皆で同時に指差して一番目立っていた男の子をグループリーダーに決めました。続いて、そのリーダー男子が皆が座った円陣の周りを奇声を発し飛び跳ねながら一周し始めたのです。「いやー、どこの世界もリーダーは大変だな。」と笑顔で眺めていると、戻ってきたリーダーが隣の子の肩をタッチして、その子が同じように自分の名前を叫んでグルグルし出すではありませんか!ギイェー!リーダーだけじゃないの?これを皆がやるわけ!?どんどん順番が迫ってきて、ついに私が左肩をタッチされました。「なるようになれ!」精神で、奇声一発「○○○!」と自分の名前を叫び、右手と左手の握りこぶしを交互に振り上げながら、手拍子の円陣を走って一周し、隣りに肩タッチして座り込みました。マッシロ。不思議と吹っ切れた気はしましたが、この様子を知人に見られなくてよかったと心から思いました。「旅の恥は掻き捨て」と言いますが(旅の途中ではありませんけど)、今の私なら年の功で「笑われたって死ぬことはない」と開き直れますが、子ども時代にいきなりこんなに自己主張の強く言葉も分からない外国の世界に入れられたら、さぞや辛かったと思います。身をもってその恐怖を体験しました。異国で生きている子ども達はたくましいなぁ。そうして、約1時間半の「友だちつくろう」セッションも、最後はスタッフへの感謝の拍手で締め、親グループと合流しました。



その後は、カレッジで学ぶ心構えのセッション(ボランティアのすすめ、勉強態度、アドバイスなど)、キャンパス・ツアー、用意されたランチを取り、図書館で学生証・カレッジIDを発行してもらいました。キャンパスツアーでカフェテリア・教科別の教室・図書館・売店などを回ると、ちょっとワクワクしてきました。2階建ての図書館は地域の公共図書館を兼ねており、リラックスできそうです。懐かしの学生生活が蘇りました。


場違いの"New Student Orientation"は、結果的に10代テキサン少年少女たちに触れ合うことができ、キャンパスの様子を見学できましたし、なかなか貴重な体験ではありました。しかし、もう一度機会があったら参加したいか?答えは「NO」です。