アメリカ生活を振り返って(3)。

今年のお正月はアメリカで迎えたことなど、夢の彼方のできごとのようです。アメリカ生活を振り返っての第三弾は、「子育て」について書いてみます。たった10ヶ月のアメリカでの子育てでしたが、両手のひらで支えられるような新生児が、ハイハイして立ち上がって歩き出すまでの成長があったので、色々と変化も大きかったです。


出産後、母乳が奨励されるのは、日本もアメリカも同じです。残念ながら私は母乳が満足に出なかったので、わりとすぐにミルクに移行しました。このミルクが、日本と大違い。日本は粉ミルクがメイン、というかそれしかないと思いますが、アメリカでは粉のほかに、液体があるのです。それも、そのまま飲ませることができる乳首付きのミニプラスチック容器入りのミルクから、水で2倍に希釈する缶詰タイプ、72時間以内に飲みきるボトルタイプなど、種類は充実しています。


初めてミルクを作るときには、ばい菌が入らないように、キッチリ測って溶け残しができないようになど、気を使うもの。液体ミルクは粉ミルクより割高ですので、ずーっと使い続けるのは難しいかもしれませんが、余裕がない時期や出先でもすぐ飲ませられる液体ミルクは大変に助かりました。日本では、液体ミルクの認可が下りていないと聞きました。もちろん、母乳が一番ですが、それが叶わないママのために、封を切るまで常温で持ち運びができる液体ミルクがあると便利だなぁとは思います。


あと、ミルク自体の成分も、牛乳や大豆、あとそれらにアレルギーがおきてしまう赤ちゃんむけのタイプや、鉄分を足したものなど、かなりの種類があります。アメリカではベビーミルクの専門メーカーがあるので、それだけミルクに特化した開発販売ができるのかもしれません。ちなみに、我が家は「Similac」社のミルクを愛用していました。


ほか、アメリカと日本の子育てとして大きな違いがあるのは、Sleeping、つまり「寝るかたち」でしょうか。小児科病院からもらった「よい眠りへのアドバ イス」によれば、「できれば生後数週間以内に両親と別室で赤ちゃん1人で寝かしつける」ことが推奨されています。これって、日本人にはちょっと考えにくいのではないでしょうか。少なくとも数ヶ月以内なら、日本のママだったら目の届く範囲に赤ちゃんを置いて眠りたい(まあ実際は起こされて眠れないかもしれませんが)と思うのでは。夫婦と別室で赤ん坊を寝かすというのは、赤ん坊の泣き声がうるさいからという理由ではなく、両親の生活と赤ちゃんの生活環境を、お互いのためにしっかり分離するということなのだと思います。赤ん坊は親が近くにいないこともすぐに慣れるそうですし、親はモニターを設置して監視するのが普通になるようです。


赤ちゃんと親が別々の部屋で寝るという習慣は、アメリカの広い家なら赤ん坊のために一室用意できるという物理的な要因も大きいはずです。日本の狭い住宅状況だと、赤ん坊のために丸々一室使うという発想は出てこない気がします。私も妊娠中に友人から、「Babyの部屋作りは進んでいる?」と何度か聞かれました。ベッドからタンス、子供用ソファなどを用意して、壁は性別に合わせて赤ちゃん部屋をデコレーションするものだそうですね。赤ん坊専用の部屋を用意していなかった私は、答えに窮した覚えがあります。


あと、布団と違ってベッドだと、赤ん坊を真ん中に川の字で「一緒に寝る」という発想がわかないのかもしれません。下手したら、赤ちゃんやパパママがベッドから落ちちゃいますからね。その点、布団ははみ出しても問題ないですし、赤ちゃんには安心な寝床と言えますね。私も畳にふとんが恋しくなりました。


結局我が家では、生後1ヶ月くらいまでは「バシネット」と呼ばれる、キャスター付きのかご型ベビーベッドに娘を寝かして、夫婦の寝室の隅において置いていました。が、2ヶ月の前には、娘がそのバシネットに不満(?)の泣き声を上げ始めたので、夫婦のキングサイズベッドの真ん中に寝かすことになりました。娘が転げ落ちたこともあります。そして、現在日本に至っても、ベッドはシングル×2に変わりましたが、真ん中で堂々と娘は眠っております。


アメリカ時代の娘の主治医は、夫婦の寝室にクリブ(ベビーベッド)を持ってくるのはいいが、一緒にベッドで眠るのはどうか、9ヶ月くらいになったら蹴飛ばされちゃうわよと、笑ってアドバイスしてくれました。仰るとおり、日々蹴飛ばされ、パンチされております。主治医はアジア系の女性だったので、「アジアの人はそういう風(赤ん坊と並んで)に寝るのよね」と、一定の理解はありました。そっか、川の字はアジア文化だったのか、と思っていたのですが、帰国前に開いていただいた送別会で、「私はベッドで両親の間に寝ていた」というアメリカ女性がいらっしゃいました!お父様がスコットランド系の方で、アメリカにもそういう育児方法はあるし、私も娘とそうしたとのこと。一概に「アメリカ人は」とは言い切れないようです。


ところ変われば、育児も変わる。何がいい悪いでなく、子育てに王道なし、といったところでしょうか。いろいろと面白いものです。