アメリカ生活を振り返って(2)。

暑すぎた2010年の日本の夏も徐々に終息に向かい、何事にも終わりがあるんだなぁと実感していたら、今度は急に肌寒さが身に沁みてきて、洗濯物が数時間で乾くあの強烈な日差しが恋しくなってくるなど、相変わらず自分勝手な思いを馳せている今日この頃です。


アメリカから帰国して6ヶ月。すでにヒューストンでの生活は忘却の彼方になりつつあります。ただ、あちらで通っていたレストランやお店のメーリ ングサービスだけが、確かにアメリカで生活していたことを呼び起こさせます。毎日のように届くこのメールの山、必要ないと思いつつも、何となく停止依頼をせずにそのままになっています。物理的住所は変わっても、メールアドレスが変わらないと、「つながっている」安心感がありますね。


今日は、アメリカのエンターテイメントについて感じたことを書いてみたいと思います。
あちらで何度か舞台を観に行きましたが、特にミュージカル は、「やはり」なのか、レベルが高いなと思いました。ブロードウェイ・ミュージカルとうたってはいても、ヒューストンにやって来るメンバーは巡業メンバー主体で(時折オリジナルメンバーもいましたが)、本場を目指す二番手さん中心だと思うのですが、それでも主役以外のアンサンブルまで含めた出演者全体のハーモニーは素晴らしいと感じました。日本だと、主役以外をドキドキ・ハラハラして見なくてはいけない時もありましたが、そういったことはなかったですね。


また別の話で、こんなことがありました。ある日、夫が会社からDVDを持って帰宅し、「映画に出演したんだ。監督から借りてきたんだけど、見る?」とちょっと得意げに言いました。聞いてみると、最近夫の会社に入社した新人さんたちが研修の一環で映画を撮ることになり、既存社員が出演者となったので夫もチョイ役で出たんだそうな。ちなみに、アメリカの会社における「新人」は、学校を卒業したばかりのいわゆる新卒ばかりではないので、年齢も経歴も まちまちです。


見てビックリ!まったく普通の映画ではありませんか!!!研修課題と聞いたので、若者にありがちな前衛的な映像や、見ている方が気恥ずかしくなるような楽屋落ち話や、素人っぽい画像構成を想像していた私の予感を、軽〜く裏切ってくれたのでした。筋は会社の風紀を直すために若い社員(新人)が奮闘するという、別段面白い内容ではありません。が、主役を演じる嫌味のないごくごく普通の好青年のキャスティングといい、私も面識のある社員さんたちの自然な演技といい、わかりやすい展開とオチといい、安心して見ていられる娯楽映画といった25分ほどの作品でした。会社という狭い屋内を舞台とするところは、シットコムと呼ばれる「シチュエーション・コメディ」(「奥様は魔 女」や「フルハウス」などが代表作でしょうか)の伝統を見事に踏襲していました。音楽の選曲もバラエティに富んでいて、効果音のかぶせ方もバッチリ、妄想部分はお約束の白黒のモヤモヤにして前後のストーリーと はっきり区別させたり、最後は上司二人が全身ブルースブラザースのスタイルで決めて、肩を組みつつステップ踏みながら去っていくところにエンドロールが来たりして、いやもう脱帽。


ちなみに、夫の会社はエインターテイメントとは全く遠く離れた業界です。なのに、なんでこんなに皆、演技がうまいの?このはじけっぷりは何?どうやってこの撮影技術を身につけたの?学生時代に皆がドラマ作りを学ぶわけ?さまざまな疑問がフツフツとわいて来ました。素人さんがこれだけのレベルの作品を作れるのなら、そりゃあアメリカにおけるショウビズは栄えるわなぁと、妙に感心してしまいました。昨年の大統領選真っ只中に、宿敵同士のオバマ候補とマッケイン候補が笑いと毒舌たっぷりのスピーチをしたことをブログにもUPしましたが(参照:2008/10/16 アメリカの底力?)、見せる=魅せることに長けているアメリカ人気質は、日本のそれとは違って大変に興味深かったです。そういえば、先日NHKで見た「爆笑学問」で、野田秀樹氏を前に太田光氏が、オーバーリアクションで普段から演技しているようなアメリカ人に対して、日本人は演じることに向かないんじゃないか(うろおぼえでゴメンナサイ)みたいなことを話していましたが、それ、ちょっと納得です。


なんだか、あっちこっちに話が飛んでしまいました(苦笑)。あ、夫の役は、主人公の青年が「いろんな国の言葉がしゃべれたらいいなあ〜」という妄想場面で、青年がペラペラ日本語を話すのを両手挙げてビックリしている日本人、というものでした。彼の話す日本語指導もしてあげたそうです(笑)。