再会した本。

読書ネタが続きます。


先日なにげなく本棚を見ていて、まだ日に焼けていない単行本の背表紙が目に飛び込んできたので、パラパラめくってみました。「対岸の彼女角田光代著です。2004年の作品で、私が持っているのは2005年の第4刷。この本を自分で買ったのか人からもらったのか、いつどこで初めて読んだのか、ストーリーはどんなで結末はどうなるのか、我が身が情けなくなるほど記憶がありません。ただ、読後かなり前向きな好感触があったことだけは、辛うじて覚えていました。


久しぶりにページを繰ってみて、「あーそーいえば」、と段々と記憶が蘇ってきました。主人公は、3歳の女の子を持つ専業主婦・小夜子と、小さいながら旅行関連会社の社長である葵。ともに同じ大学を出て、只今35歳。そしてもうひとりの主人公は、葵の高校時代の友人・魚子(ななこ)。小夜子がパートを探し始めることで、初めて葵と出会い、仕事を仲介にして展開されていく現在の話と、葵が過ごした魚子との高校時代の日常生活が、交互に進行していきます。最初、主人公の設定からステレオタイプな女性の二項対立の話かと躊躇しましたが、ことはそんなに単純ではなく、よかったです。主人公が同年代ということもあり、細かい時事ネタは懐かしかったですね。「女性の友情もの」というと口幅ったいですが、作者の筆力でそれがドロドロとしていなくて、テンポよく読めました。希望も絶望も一緒くたに飲み込んで、読後は爽やかというのがよかったです。さすがの、直木賞作品でした。


おそらく、最初に読んだ時、私は葵を中心に世界を見ていたのではないかと思います。今回は小夜子目線に近い感じで読み通した気がしました。その時に置かれている自分の立場によって、同じ本がまた違う色を持つと言うのも、面白い経験でした。


調べてみたら、この作品、ドラマ化されていたんですね!小夜子が夏川結衣、葵が財前直美、魚子が多部美華子。おー、いい線いってる。(小夜子役と葵役が逆でもいいかも。)ほか、堺雅人木村多江香川照之など芸達者な役者さんが出ていて、いくつか賞もとったらしいです。これはいつか見たいなぁ。

対岸の彼女

対岸の彼女