空飛ぶ女性が見た日本。
先日読み終えた本のことなど。日本で読む時間がなくて、こちらまで持ってきた本です。作者は、大西洋単独無着陸飛行に初めて成功した、かの有名なチャールズ・リンドバーグの妻、アン・モロー・リンドバーグです。本書は、1931年に夫婦2人で愛機シリウス号に乗って、ニューヨークからカナダ・アラスカ・千島列島を経由し日本・中国まで、北太平洋航路調査飛行した際の紀行文です。「何年何月に何をした」という日記的な記述より、彼女の心の赴くままに、より印象的な出来事や感じたことに筆を費やしているので、エッセイに近い感じです。
- 作者: アン・モローリンドバーグ,Anne Morrow Lindbergh,中村妙子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2002/08
- メディア: 単行本
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圧巻なのは、目的地の一つである「日本」についての記述でした。短い日本滞在中に、こんなにも日本を深く理解し愛してくれるアメリカ人がいるのかと驚嘆しました。日本人である自分を誇らしくも思い、と同時に日本のことを知らない自分に恥ずかしくなるほどです。はっと胸を突かれた「サヨナラ」という章から、少々長いですが、以下抜粋させていただきます。
「サヨナラ」を文字通りに訳すと、「そうならなければならないなら」という意味だという。これまでに耳にした別れの言葉のうちで、このようにうつくしい言葉をわたしは知らない。Auf WidersehenやAu revoirやTill we meet againのように、別れの痛みを再会の希望によって紛らわそうという試みを「サヨナラ」はしない。目をしばたいて涙を健気に抑えて告げる Farewellのように、別離の苦い味わいを避けてもいない。
(中略)
一方、Good-by(神があなたとともにありたもうように)とAdiosは多くを語りすぎている。距離に橋を架けるといおうか、むしろ距離を否定している。Good-byは祈りだ。高らかな叫びだ。
(中略)
けれども「サヨナラ」は言いすぎもしなければ、言い足りなくもない。それは事実をあるがままに受けいれている。人生の理解のすべてがその四音のうちにこもっている。
「翼よ、北に」中村妙子訳 みすず書房 p248-249より